DAIKAN|Milan Design Week 2026

Return to…五感のインスタレーション
ミラノデザインウィーク2026にて展示された五感のインスタレーション「Return to…」。人間の覚醒をテーマに、視覚を起点として音・触覚・嗅覚・味覚へと知覚を拡張していくアート展示です。
鏡面研磨された金属天板が液体のように揺らぐ《FLUX TABLE》(株式会社DAIKAN)を中心に、各感覚を深めていく空間が構成されました。
嗅覚においては、香りを「聞く」という体験を通して、日本のものづくりにおける素材・時間・人のつながりを表現しています。
CONCEPT|香りを聞く
日本のものづくりは、
素材を「支配する」のではなく、
その奥にある存在に耳を澄ませることから始まります。
鉄も、石も、生物の命も、
すべては同じ連続性の中にあり、
響き合いながらつながっています。
香りは、単に「嗅ぐ」ものではなく、
その奥にある気配を「聴く」ものです。
人の感性によって素材の微細な響きを受け取り、
丁寧な手仕事によって磨き上げていくことで、
作品には静かな魂が宿ります。
本プロジェクトは、香りを「見えないものを知覚するためのメディア」として再定義し、
“聞く香り”という新たな体験を提示します。
APPROACH|素材と時間の嗅覚的翻訳
本インスタレーションでは、日本のものづくりにおける「素材・時間・人」の関係性を、2つの香りとして表現しています。
天之御影命—石の記憶


ブレンド:水晶(長野・ヒマラヤ・淡路島)、乳香(オマーン)
※ 鉱物素材から特殊な手法で芳香成分を抽出
長野、ヒマラヤ、淡路島で採取された水晶は、
それぞれ石そのものが喚起する時間の感覚に従って蒸留されています。
長野は夕暮れ、ヒマラヤは夜、淡路島は満月の夜。
同じ水晶でありながら、
土地や光、記憶によって異なる響きを宿しています。
本香りは、日本神話に登場する製鉄と鍛冶の神、
「天之御影命(あまのみかげのみこと)」の名を冠し、
石が火に触れ、鉄へと変わり、人の手によって鍛えられていく
ものづくりの起源を想起させます。
石は、土・水・光、そして遥かな時間の中で形成され、
自然と人間の営みをつなぐ存在です。
そこに添えられたわずかな乳香は、
祈りのように、素材に内在する気配を静かに引き出します。
鉄と獣の記憶—命の響き


ブレンド:グリーンリーフ、サイプレス、ライトワックス、シベット、焦げたレザー、メタルノート、パチュリ、アニマルベース、アンバー
大地から立ち上がる、名もなき存在の気配。
グリーンリーフとサイプレスは、
風景の中で自由に呼吸する生命の輪郭を描き、
ライトワックスはその温かさと質量を感じさせます。
やがて空気は変化します。
シベットと焦げたレザーが断絶の瞬間を示し、
金属の冷たい響きが、人間の意志を浮かび上がらせます。
しかし、生命は消えることはありません。
パチュリの大地へと還りながら、
アンバーとアニマルノートが、形を超えて続く存在を示します。
生命は奪われるのではなく、
かたちを変えながら響き続けていきます。
この香りは、鉄と命が交差する瞬間を
「響き」として知覚させる体験です。
OUTCOME|知覚の拡張と連続性の体験
本インスタレーションは、視覚中心の鑑賞体験を超え、
五感を通じて“つながり”を知覚する体験へと拡張しました。
2つの香りは対立するものではなく、
命から土へ、土から石へ、石から鉄へ、
そして再び命へと循環する連続的な流れの中にあります。
来場者は香りを単なる刺激としてではなく、
見えない関係性を感じ取るための媒介として体験します。